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「コミュニケーションを妥協しない」ソニックガーデンに聞く、チーム力を高めるリモートワークの秘訣

緊急事態宣言が解かれ、徐々に人が動き始めた日本。コロナの影響で働き方の見直しを余儀なくされたみなさんは、今、どのように働いていますか?今後はどうしていきますか?

ウェブアプリケーションの受託開発やソフトウェアの提供などを行う株式会社ソニックガーデンでは、2016年からオフィスを全撤廃し、50名程度の全スタッフがフルリモートで仕事をしています。新規事業・自社サービスの事業統括をしている八角 嘉紘(ほすみ よしひろ)さんに、“リモートワークの大先輩”とも言えるソニックガーデンさんの取り組みについて聞いてみました。

44名が、18都道府県に散らばり、共に働く

── ソニックガーデンさんは、どのような経緯で、全社員がリモートワークになったのでしょうか?

リモートワークをはじめたのは2010年、法人設立前の社内ベンチャー時代からなんです。当時いた5名ほどのスタッフのうち1人が「どうしてもアイルランドに行きたい!働きながら旅をしたい!」と言い出した。「じゃあ、やってみようか」と、Skypeをつなぎっぱなしにして、他のスタッフはオフィスに出社する形で、リモートワーク体制をスタートしました。

── そこから徐々に全員がリモートワークになっていくのですね。

そうです。翌年に、今の社長が社内ベンチャーをMBO(マネジメントバイアウト)して独立し、ソニックガーデンを法人化しました。そこから、勤務地不問で採用も始めました。世間的にはまだ一般的ではありませんでしたが「リモートワークで大丈夫」という経験と実感がありましたから、不安はなかったですね。最初に採用したのは兵庫県の人。当時は、アイルランド、兵庫、東京をSkypeでつないで仕事をしていたのです。

── 現在、スタッフのみなさんの居住地は全国に散らばっているのでしょうか?

はい。メンバーは50名程度(2020年7月現在)いますが、18都道府県に散らばって働いています。実家に戻るスタッフもいれば、郊外に移住したスタッフもいます。

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セルフマネジメントとカルチャーマッチが前提

── スタッフのみなさんは、リモートワークを気に入っていますか?

はい、気に入っていますよ。自分にとってベストな環境をつくれますから。時間の使い方などのソフト面から、「腰痛がつらいから、机やイスにこだわりたい」「キーボードはこれじゃないと」といったようなハード面まで、自分の働き方にマッチした環境を自分でつくることができます。

── しかし、環境を整えるのには費用がかかりますよね。費用はどうされているのですか?

働く環境への投資は、原則会社が払います。

── なかには、高額な机やイスを希望する方もいると思うのですが…。

それでも、必要なものであればちゃんと会社が負担します。セルフマネジメントを大事にする会社なので「大人なんだからちゃんと考えて判断してくれるだろう」という方針ですね(笑)。そもそもリモートワークのスタートも、スタッフ側の必要性に合わせてつくった制度です。「会社がルールをつくり、スタッフはそれに従う」のではなく「イレギュラーが発生したときに考え、ルールを決める」のが弊社のカルチャーでもあります。

── 自分の家に働くスペースを用意できない人は、どうしているのでしょうか?

そういったスタッフのために、会社が「ワークプレイス」として、オフィス代わりの部屋を家の近くに借りているんです。東京、神奈川に2ヶ所、岡山などにもあります。自宅近くのワークプレイスでなくても自由に使えますし、スタッフの家族が使ってもいいんです。東京の自由が丘にあるワークプレイスは敷地が広めで、布団などもあります。地方のスタッフが東京での打ち上げに参加したときや、家族旅行に来たときなどに、ホテル代わりに泊まったりもできるんです。

── とても自由に使えるのですね。カルチャーと言えば、弊誌のTokyo Work Design Week主催・横石崇さんの取材では「CX(カルチャートランスフォーメーション)」という話がでました。

いきなりDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組むのは難しい、ということ。DXの前に、CX(カルチャートランスフォーメーション)が必要だと思うんです。
コロナ禍でもリモートワークがうまく機能していた会社は、以前から企業の文化として取り入れて準備をしていたはずです。逆に、コロナ以前にリモートワークをしたい社員がいてもできない理由を並べて実践してこなかった企業は、対応に四苦八苦しているのが現状でしょう。
このような事態で臨機応変に対応するためにも、組織のカルチャー変革から始めていかない限り、先行きや予測が立たない時代では生き残っていくことは難しくなる一方でしょう。

引用:「オフィス戦略」から「ワークプレイス戦略」へ。コロナ時代に考え直すべき3つの「間」

── ソニックガーデンさんのセルフマネジメントを大切にする文化が、リモートワークの前提になっているんですね。

そうですね。すでに弊社に所属するメンバーはもちろん、新しいメンバーもカルチャーをしっかり理解して入ってきます。弊社では、入社までに1年半くらい時間をかけるので、入社する頃には会社のカルチャーが十分わかる状態になっているんです。採用に手間とコストをかける分、入社後の齟齬もないし、離職率はほぼゼロです。

── それは素晴らしいですね。これだけ充実したリモートワーク環境や、自分の裁量にあわせた自由さがあると、優秀な人が集まってきそうです。

「地元や地方で働きたいけど、そこには自分に合うような魅力的な仕事がない」という方は、リモートで働ける会社を探しますよね。自由な居住地は、採用にあたっての弊社の強みにもなっています。

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できなくなった合宿の代わりに、ハッカソンを活用

── 2020年、新型コロナウイルスの感染が世界で広がりました。ソニックガーデンさんはどのような影響を受けていますか?

業務のオペレーションはまったく変わりません。ずっとリモートワークでやってきていますから。ただ、パンデミックによる景気後退で、ソフトウェア受託開発は減るだろうと予想しています。

だからこそ力を入れているのが、自社サービス事業です。とくに、弊社がリモートワークで実際に使っている仮想オフィスサービス「Remotty(リモティ)」は、お問い合わせが増えています。多くの会社がリモートワークに対応せざるをえなくなったからこそ、オンライン上のコミュニケーションツールや勤怠管理ツールなどは需要が増えているんです。

実は、コロナ以前からお問い合わせは増えつつありました。東京オリンピックを機にリモートワークにも取り組もうとしていた企業も、結構多かったんです。そこからコロナの影響もあって、今年の3月以降、お問い合わせは今までの10倍くらいになりました。

Remottyを活用したバーチャル会社見学

── コロナ以前、ソニックガーデンさんは合宿を大切にしていたとお聞きしました。今は大人数で集まることができない状況かと思いますが、どう対策されているのでしょうか?

そもそも、合宿の目的はふたつあります。ひとつは、入社したばかりの人たちを中心に、弊社のカルチャーをさらに深く知ってもらうため。もうひとつは、単純ですが仲良くなるためです。同じ空間で過ごし、同じ食事をとり、同じテーマで顔を合わせて話し合う。こうやって仲良くなると、仮想オフィス上でも話しかけやすいし、円滑にコミュニケーションがとれるようになります。その後のリモートワークの生産性が格段に上がるのです。

最近は、こういった目的の代替としてハッカソンを活用しています。コロナ以前も実施していましたが、現在はリモートでのハッカソンを毎月第4金曜日に開催しています。「技術ネタハッカソン」とか「自社プロダクト祭りハッカソン」とか、テーマはさまざまですね。

弊社はリモートワークを取り入れつつも、チームワークをとても大事にしています。ハッカソン はチーム対抗戦のような形で行うのですが、「チームで課題に取り組む」という弊社のカルチャーを、ハッカソンを通じて体感できるし、実際にスタッフ同士の仲も深まるわけです。ただ、合宿ができるような状況になれば、すぐに再開すると思いますよ。合宿は単純に楽しいですから(笑)。

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以前開催した合宿の様子

リモートワークを続けるかどうか、迷っている企業は要注意

── コロナをきっかけにリモートワークを取り入れ、まだ運用期間が短い会社も多いと思います。リモートワークを長く続けてきたソニックガーデンさんから、なにかアドバイスがあればぜひお願いします。

リモートワークを続けると決めているか、迷っているかで、アドバイスは変わってきます。

まず、続けると決めている会社について。リモートワークには、どんな組織にも共通で立ちはだかる3つの壁があります。労務管理、セキュリティー、コミュニケーションです。このうち、労務管理とセキュリティーは、皆さんきちんとルールを作っていると思います。問題が起きた場合、会社として致命傷になりかねませんから。だけど、コミュニケーションは妥協しがちなんです。「リモートワークだからうまくコミュニケーションが取れなくても仕方ない」と。そうすると、結局は生産性の面でオフィスに勝てません。コミュニケーションも他ふたつ同様に、妥協せずきちんと運用方法を検討することが大切だと思います。

課題が大きいのは、リモートワークを続けるかどうか迷っている場合です。例えば、Remottyの仮想オフィスを緊急避難所的に使っている会社は、運用が中途半端になりがちなんです。「一時的な措置だから」「今後続けるかわからないから」という意識でを使うと、運用が曖昧になり、生産性は当然上がりません。やるなら、やる。最低限のルールを決めて、きちんと使う。我々が提供している仮想オフィスに限らず言えることですが、今後どんな働き方にしていくのか意思を明確にした上で運用することが大切です。

今後、世の中の働き方は大きく変わると思います。これまでITとは距離が遠かった会社も、頑張ってリモートワークや業務のオンライン化に取り組みました。これまで色々な理由があり変化できなかった会社が、コロナをきっかけに変化しています。こうした会社が増えれば増えるほど、必要のない移動は減り、会議やファイル共有などオンライン上でのコミュニケーションも工夫されていくでしょう。生産性が上がる方向に社会全体が変化していく土壌ができた。少しずつ、いい方向に変わっていけると思います。

── そうですね。パンデミックが収まっても、コロナ以前に戻るのではなく、よりよい方向への変化を止めずに進化し続けたいですね。長年リモートワークに取り組んできたソニックガーデンさんのアドバイスは、これからの働き方を考える上で、とても参考になると思います。今日はありがとうございました!

(取材:葛原 信太郎)

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八角 嘉紘(ほすみ よしひろ)
大手コンサルティング会社でIT企業を中心に営業・マーケティングに関するコンサルティングを経験。現在はソニックガーデン社の広報・マーケティング活動や、新規事業・自社サービスの事業責任者をしている。
リモートワーク専門メディア「Remote Work Labo」を立ち上げ、近年ではソニックガーデンが経験してきたノウハウを広く世の中に提供するべく、働き方に関するコンサルティングも行っている。
株式会社ソニックガーデン
https://www.sonicgarden.jp/
代表倉貫が2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンとして創業。当時は浜松町にオフィスを借りていたが、試行錯誤を経て2016年にオフィスを撤廃し、社員全員がフルリモートワークに。
【受賞歴】
・2016年、総務省による「テレワーク先駆者百選」に選出、船井財団「グレートカンパニーアワード」にてユニークビジネスモデル賞を受賞。
・2018年、 「働きがいのある会社ランキング」ベストカンパニー賞、「第3回ホワイト企業アワード イクボス部門賞」を受賞。
・2019年、テレワーク推進賞では、先進的な取り組みが高く評価され、中小企業テレワークチャレンジ特別奨励賞(テレワーク実践部門)を受賞。
テレワーク・リモートワークに関する情報を社会に向けて発信するメディア「Remote Work Labo」の運営や、「仮想オフィスRemotty」の開発・提供により、リモートワークの普及に尽力。

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